秋冬のアウター選びで必ず目にする「モッズコート」と「フィールドジャケット」。どちらもミリタリーアイテムで見た目も似ているから、ぱっと見ただけでは区別がつきにくいですよね。
実は私も以前、古着屋さんで「このカーキのジャケット、モッズコートとフィールドジャケットってどう違うんですか?」と店員さんに聞いて、詳しく教えてもらった経験があります。知れば知るほど、両者の成り立ちや役割が全然違うことに驚きました。
今回は、そんな混同しやすい「モッズコート」と「フィールドジャケット」の違いを、わかりやすく徹底解説していきます。
モッズコートとは?
モッズコートは、1950年代にアメリカ軍が採用した極寒用の野戦パーカのことを指します。もともとは「M-51パーカ」や「M-65パーカ」という正式名称があり、フィールドジャケットの上から着用するために作られた防寒用のコートでした。
名前の由来は、1950年代後半から1960年代にかけてイギリスで流行したモッズ(Mods)という若者文化から来ています。モッズたちはスクーターに乗ってクラブに行く際、お気に入りのスーツが汚れないようにアメリカ軍の払い下げパーカを羽織っていました。この文化が広まったことで「モッズコート」という呼び名が定着したのです。
ちなみに「モッズコート」という名称は日本で生まれた呼び方で、1990年代に日本のファッション業界が使い始めたとされています。海外では単に「パーカ」と呼ばれることが多く、オアシスのリアム・ギャラガーも「パーカ」と呼んでいたそうです。
モッズコートの特徴
モッズコートには、他のミリタリージャケットにはない独特の特徴があります。
まず一番目立つのが、後ろの裾が魚の尾のように二股に分かれている「フィッシュテール」と呼ばれるデザインです。これは座ったときにコートの裾が邪魔にならず、さらに防寒性を高めるための工夫でした。
着丈はお尻がすっぽり隠れるくらいのロング丈で、身幅もゆったりと大きく作られています。これはフィールドジャケットの上から重ね着することを前提としているからなんですね。実際、普段着ているサイズの2サイズ上を選ぶのが一般的です。
フードは本体と一体になっているデザインが多く、M-51の場合はボディとフードが縫い付けられています。M-65になるとフードが取り外せるようになりましたが、いずれもファーがついているものが多く、防寒性に優れています。
肩にはエポレット(肩章を取り付けるためのストラップ)がついていて、これも元は軍用ならではのディテールです。私が持っているモッズコートも、このエポレットがアクセントになっていて気に入っています。
フィールドジャケットとは?
フィールドジャケットは、アメリカ軍が野戦用(フィールド)に開発した戦闘服のジャケットのことです。特に有名なのが1965年に採用された「M-65フィールドジャケット」で、2008年まで実に40年以上もアメリカ軍の現役戦闘服として使われていました。
野戦での動きやすさと機能性を最優先に設計されており、ベトナム戦争をはじめとする様々な戦地で兵士たちに愛用されました。映画「タクシードライバー」でロバート・デ・ニーロが、「ランボー」でシルベスター・スタローンが着ていたジャケットといえば、ピンとくる方もいるかもしれませんね。
フィールドジャケットの歴史は長く、M-41、M-43、M-51などの前身モデルがあり、それぞれの時代で改良が重ねられてきました。そしてその集大成として完成したのがM-65というわけです。
フィールドジャケットの特徴
フィールドジャケットの最大の特徴は、その実用性を追求した機能的なデザインです。
着丈は腰くらいまでの短め丈で、動きやすさを重視しています。モッズコートと比べるとコンパクトなシルエットで、重ね着というよりは単体で着ることを想定して作られています。
前面には大きなフラップポケットが4つついていて、たくさんの荷物を収納できます。このポケットは立体的な作りになっていて、物を入れやすく取り出しやすい工夫がされています。
襟はスタンドカラーで、襟を立ててチンストラップで固定すれば首元からの冷気を防げます。また、襟の内側にはフードが収納されていて、必要なときに取り出して使えるんです。私も寒い日にこのフードを使うと、その機能性の高さに感心します。
素材はコットンとナイロンの混紡生地(ナイロンコットン)が使われていて、耐久性がありながら速乾性にも優れています。M-51まではコットン100%でしたが、M-65からはナイロン混紡に変更されて、より実用的になりました。
着脱可能なキルティングライナー(裏地)がついていて、これを装着すると保温性が格段にアップします。季節や気温に合わせて3通りの着方ができるのも魅力ですね。
モッズコートとフィールドジャケットの決定的な違い
ここまで読んでいただければ、だいぶ違いが見えてきたと思いますが、改めて両者の違いを整理してみましょう。
用途の違い
最も大きな違いは、それぞれの用途です。
フィールドジャケットは野戦用の戦闘服として、兵士が直接着用するために作られました。動きやすさと機能性が何よりも重視されています。
一方、モッズコートはフィールドジャケットの上から羽織る防寒用のパーカとして開発されました。つまり、フィールドジャケットを着た上にさらにモッズコートを重ねるというのが、本来の使い方だったんです。これを知ったとき、私は「だから着丈や身幅が全然違うのか!」と納得しました。
丈の長さとシルエット
モッズコートはお尻が隠れるロング丈で、ゆったりとしたビッグシルエットです。重ね着を前提としているため、かなりボリュームがあります。
フィールドジャケットは腰くらいまでの短め丈で、すっきりとしたシルエットです。動きやすさを考えて、無駄な部分が削ぎ落とされています。
裾のデザイン
モッズコートの最大の特徴である「フィッシュテール(燕尾)」。後ろの裾が魚の尾のように二股に分かれているデザインは、モッズコートならではのものです。
フィールドジャケットの裾は普通のジャケットと同じように、真っすぐカットされています。
フードの有無と形状
モッズコートは大きなフードがついていて、多くの場合、本体と一体化しています。M-51は完全に一体型、M-65は着脱可能なタイプです。フードの縁にはファーがついているものが多く見られます。
フィールドジャケットには最初からフードがついているわけではなく、スタンドカラーの襟の内側に小さな簡易フードが収納されています。M-65には別売りのファー付きフードを取り付けることもできますが、基本的には襟のみのデザインです。
ポケットの数と配置
モッズコートのポケットは、フロントに大きなフラップポケットが2つついているシンプルな構成です。
フィールドジャケットは、フロントに大きなフラップポケットが4つ(胸に2つ、腰に2つ)ついていて、より実用的な作りになっています。
素材の違い
モッズコートのM-51はコットン100%、M-65はコットンとナイロンの混紡が使われています。
フィールドジャケットのM-65も同様にコットンとナイロンの混紡(50:50)を採用していますが、M-51フィールドジャケットはコットン100%でした。
モッズコート着せてみたくなった性癖 pic.twitter.com/YYWgVRWsOQ
— よっしー(かぐぺろ) (@kaguyapero_pero) October 19, 2025
それぞれの魅力と着こなし方
モッズコートの魅力
モッズコートの一番の魅力は、そのカジュアルでこなれた雰囲気です。ロング丈のゆったりしたシルエットは、トレンド感もありながら体型カバーにもなるので、幅広い方に似合います。
私の場合、モッズコートはデニムやスニーカーと合わせてカジュアルに着ることが多いです。子供と公園に行くときなんかは、動きやすくて暖かいので重宝しています。フードのファーが顔周りを華やかに見せてくれるのも嬉しいポイントですね。
またフィッシュテールのデザインが後ろ姿のアクセントになるので、シンプルなコーディネートでも様になります。定番のカーキ色だけでなく、ブラックやネイビーもおしゃれです。
フィールドジャケットの魅力
フィールドジャケットの魅力は、その完成されたデザインと機能美にあります。40年以上軍で使われ続けたということが、その完成度の高さを物語っています。
短め丈ですっきりしているので、きれいめなコーディネートにも合わせやすいんです。私はチノパンやスラックスと合わせて、ちょっとしたお出かけのときに着ることが多いです。4つのポケットは見た目もかっこいいし、実用性も抜群です。
ライナーを取り外せるので、秋から春先まで長いシーズン着られるのもポイントが高いですね。1着で3通りの着方ができるコスパの良さも魅力です。
M-51とM-65の違いも押さえておこう
モッズコートにもフィールドジャケットにも、「M-51」と「M-65」というモデルがあって、ちょっとややこしいですよね。ここで簡単に説明しておきましょう。
数字は採用された年を表していて、M-51は1951年、M-65は1965年に採用されたモデルです。つまりM-65の方が後継モデルということになります。
M-51パーカ(モッズコート)の特徴
フードが本体と一体型になっていて、肩にエポレットがついています。生地はコットン100%で、着込むほどに味が出るのが特徴です。厳密に言えば、本物のモッズコートと呼べるのはこのM-51パーカだけ、という説もあります。
M-65パーカ(モッズコート)の特徴
フードが着脱可能になり、襟がスタンドカラーになりました。生地もコットンとナイロンの混紡に変わって、より実用的になっています。ただし、肩のエポレットはなくなりました。
M-51フィールドジャケットの特徴
レギュラーカラーの襟で、袖口にボタンがついています。コットン100%の生地で、フロントはボタンとスナップの組み合わせです。
M-65フィールドジャケットの特徴
スタンドカラーになり、襟の中に簡易フードが収納されるようになりました。袖口はベルクロ(マジックテープ)で調整できるようになり、フロントはジッパー式に変更されています。
グリーンの岡山デニムを使ったフィールドジャケット pic.twitter.com/BRjyQGORPq
— リョン (@ryonsu24) November 24, 2025
実際に選ぶときのポイント
モッズコートとフィールドジャケット、どちらを選ぶか迷ったときのポイントをまとめてみました。
モッズコートがおすすめな人
カジュアルでラフな雰囲気が好きな方、ロング丈のアウターが欲しい方、防寒性を重視する方にはモッズコートがぴったりです。
また、体型カバーをしたい方や、トレンド感のあるビッグシルエットを楽しみたい方にもおすすめです。私も寒がりなので、真冬はモッズコートに助けられています。
フィールドジャケットがおすすめな人
きれいめな着こなしも楽しみたい方、動きやすさを重視する方、長いシーズン着回したい方にはフィールドジャケットがおすすめです。
すっきりしたシルエットが好きな方や、機能的なポケットをしっかり活用したい方にも向いています。私は荷物が多いので、4つのポケットは本当に便利です。
サイズ選びの注意点
モッズコートはもともと大きめに作られているので、普段より2サイズ下を選ぶのが一般的です。例えば、普段Lサイズを着ている方ならSサイズを選ぶといった具合です。ただし、ブランドによってサイズ感が違うので、必ず実寸を確認しましょう。
フィールドジャケットは、ジャストサイズで選ぶとミリタリーらしいきれいなシルエットになります。ゆったり着たい場合は、ワンサイズ上を選ぶといいでしょう。
私の失敗談ですが、最初にモッズコートを買ったとき、サイズ感がわからず普段と同じサイズを選んでしまって、かなりぶかぶかになってしまったことがあります。古着屋さんで買うときは特に、しっかり試着するか実寸を測ってもらうことをおすすめします。
よくある質問
Q1. モッズコートとフィールドジャケットは同じものですか?
いいえ、違うものです。モッズコートはフィールドジャケットの上から着る防寒用のパーカで、フィールドジャケットは野戦用の戦闘服です。用途も着丈も異なります。モッズコートは重ね着を前提としたロング丈、フィールドジャケットは単体で着る短め丈という違いがあります。
Q2. M-51とM-65はどう違いますか?
採用された年代が違います。M-51は1951年、M-65は1965年に採用されたモデルで、M-65の方が後継モデルです。大きな違いとしては、M-51はコットン100%でフードが一体型、M-65はナイロン混紡でフードが着脱可能という点です。フィールドジャケットでは、M-51は襟付き、M-65はスタンドカラーという違いもあります。
Q3. 普段使いするならどちらがおすすめですか?
用途によって変わります。カジュアルに着たい、体型カバーをしたい、防寒性重視ならモッズコート。きれいめにも着たい、動きやすさ重視、長いシーズン着回したいならフィールドジャケットがおすすめです。どちらも普段使いしやすいアイテムですよ。
Q4. 本物とレプリカはどう見分けますか?
本物(実物)の米軍払い下げ品には、内側にコントラクトラベル(納入業者のタグ)や年代を示す表示があります。また、使用感や経年変化も本物の証です。レプリカ(復刻品)は現代の技術で作られているので、縫製がきれいで状態が良いものが多いです。ただし、有名ブランドのレプリカは高品質で、ファッションとして着る分には十分です。
Q5. フィッシュテールがついていればモッズコートですか?
基本的にはそうです。フィッシュテール(燕尾型の裾)はモッズコートの最大の特徴なので、このデザインがあればモッズコートと考えて良いでしょう。ただし、現代のファッションブランドが作るモッズコート風のアイテムの中には、フィッシュテールがないデザインもあります。
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モッズコートとフィールドジャケットの違いは、一言で言えば「重ね着用の防寒パーカ」か「単体で着る戦闘服」かという点です。
モッズコートはロング丈でゆったりしたシルエット、フィッシュテールの裾、大きなフードが特徴の防寒着。フィールドジャケットは短め丈ですっきりしたシルエット、4つのポケット、スタンドカラーが特徴の機能的なジャケットです。
どちらも長い軍事の歴史の中で生まれた実用性の高いアイテムで、それぞれに異なる魅力があります。自分の好みやライフスタイルに合わせて選べば、秋冬のワードローブに欠かせない一着になること間違いなしです。
私自身、両方持っていますが、どちらも用途が違うので使い分けて楽しんでいます。寒い日のラフな外出にはモッズコート、ちょっとしたお出かけやアクティブに動きたいときにはフィールドジャケット、といった具合です。
ぜひお店で実際に羽織ってみて、自分に合う一着を見つけてくださいね。

