「セルティックとレンジャーズってどちらもスコットランドのサッカーチームだけど、何が違うの?」
こんな疑問を抱いたことはありませんか?私も最初は同じように思っていました。しかし、この2つのクラブについて調べてみると、実はとても深い歴史と文化的背景があることが分かったんです。
セルティックとレンジャーズは、ただのサッカークラブではありません。それぞれが持つ宗教的背景、政治的な意味、そしてサポーターの文化は、スコットランドの歴史そのものを表しているのです。この記事では、この2つのクラブの違いを分かりやすく解説していきます。
サッカーファンなら一度は聞いたことがある「オールドファーム」という言葉。これは世界で最も激しいライバル関係とも言われる、セルティックとレンジャーズの対戦のことです。なぜこれほどまでに激しいライバル関係が生まれたのか、その背景を知ることで、ヨーロッパサッカーの奥深さがより理解できるはずです。
セルティックとレンジャーズの基本情報を比較
まずは、両クラブの基本的な情報から見ていきましょう。
セルティック(Celtic FC)
- 正式名称:セルティック・フットボール・クラブ
- 設立年:1887年
- 本拠地:セルティック・パーク(グラスゴー東部)
- 収容人数:約60,411人
- クラブカラー:緑と白
- 愛称:「ホープス」「ボーイズ・イン・グリーン」
レンジャーズ(Rangers FC)
- 正式名称:レンジャーズ・フットボール・クラブ
- 設立年:1872年
- 本拠地:アイブロックス・スタジアム(グラスゴー南西部)
- 収容人数:約50,817人
- クラブカラー:青、白、赤
- 愛称:「ザ・ガーズ」「ライト・ブルー」
興味深いことに、レンジャーズの方が15年早く設立されているんですね。しかし、どちらも19世紀後半という同じ時代に生まれたクラブです。
歴史的背景の違い:設立の経緯が全く異なる
セルティックの設立背景
セルティックの設立には、とても心温まる物語があります。1887年、アイルランドからスコットランドに移住してきたカトリック教徒の貧しいコミュニティを支援するために作られたのがセルティックでした。
当時、アイルランドでは大飢饉が起こり、多くの人々がより良い生活を求めてスコットランドに移住していました。しかし、彼らは新しい土地で様々な困難に直面していました。そんな中、マリスト修道会のウォルフリード修道士が中心となって、慈善活動の一環としてフットボールクラブを設立したのです。
私がこの話を初めて聞いた時、サッカークラブが慈善目的で作られたということに驚きました。現代のビジネス化されたサッカー界とは全く違う、温かい始まりだったんですね。
レンジャーズの設立背景
一方、レンジャーズは1872年にスコットランドのプロテスタント系コミュニティによって設立されました。こちらは純粋にスポーツクラブとしてスタートし、特定の宗教的・政治的目的はありませんでした。
しかし、時代が進むにつれて、レンジャーズはプロテスタント系住民の支持を集めるようになり、結果的にセルティックとは対照的な立場に立つことになったのです。
宗教的背景の違い:最も重要な相違点
セルティックとレンジャーズの最も大きな違いは、宗教的背景です。これを理解することが、両クラブの違いを知る上で最も重要です。
セルティック:カトリック系
セルティックは1887年にアイルランドから来たマリスト(カトリック)のコミュニティによって創設され、クラブの起源はアイルランドのカトリックに根強く紐づいているのが特徴です。
セルティックのサポーターは:
- カトリック教徒が多い
- アイルランド系住民の支持が厚い
- アイルランドの文化や伝統を大切にする
- 試合でアイルランドの国旗を掲げることがある
レンジャーズ:プロテスタント系
レンジャーズは伝統的にプロテスタント教徒の支持を集めてきました。北アイルランドのプロテスタントも、主に17~18世紀スコットランドやイングランドから移住したプロテスタントの子孫なので、レンジャーズのファンを形成すると言われています。
レンジャーズのサポーターは:
- プロテスタント教徒が多い
- イギリス連合(ユニオン)を支持する
- 試合でユニオンジャック(イギリス国旗)を掲げることがある
- 伝統的にイギリス王室を支持する
実際に試合を観戦すると、この宗教的背景の違いがスタジアムの雰囲気にも表れているのを感じることができます。それぞれのサポーターが歌う歌や掲げる旗からも、その違いがよく分かります。
セルティックがオールドファームでレンジャーズを3-0で叩きのめし、スタンドは祭りの様相である。スタジアム揺れてそうだ。pic.twitter.com/YcrBhYj8Vn
— 酒井琢磨 スポーツプランナー (@takuma_sports14) September 1, 2024
政治的立場の違い:スコットランドとイギリスの関係
宗教的背景と密接に関係しているのが、政治的立場の違いです。
セルティック:アイルランド寄り・反体制的
セルティックはスコットランド、グラスゴーのクラブという存在よりもむしろ、ケルト文化、カソリック、アイリッシュ、そして労働者、反体制の象徴的クラブとして位置づけられています。
セルティックのサポーターは:
- アイルランドの独立を支持する傾向
- スコットランドの独立に賛成する人が多い
- 労働者階級の支持が厚い
- 反イギリス政府的な傾向
レンジャーズ:イギリス連合支持・親体制的
レンジャーズのサポーターは伝統的にイギリス連合の維持を支持しています。レンジャーズを支持するプロテスタントは国家独立ではなく、あくまでもイングランドやウェールズなどと連帯しイギリス連合の一部として生きるという考え方を持っています。
レンジャーズのサポーターは:
- イギリス連合の維持を支持
- スコットランドの独立に反対する人が多い
- 中流階級以上の支持が多い
- 親イギリス政府的な傾向
この政治的対立は、単なるサッカーの枠を超えて、スコットランド社会の縮図を表していると言えるでしょう。
サポーター文化の違い:スタジアムで感じる熱気
両クラブのサポーター文化にも大きな違いがあります。
セルティックのサポーター文化
セルティックのサポーターは「ザ・セルティック・サポート」と呼ばれ、世界的にも有名な熱狂的なファンとして知られています。
特徴:
- 緑色のユニフォームやスカーフで統一
- アイルランドの伝統的な歌を歌う
- 「You’ll Never Walk Alone」などのサポートソングが有名
- ティフォ(大きな旗や横断幕)の演出が素晴らしい
- 世界中にサポーターズクラブがある
私が実際にセルティック・パークを訪れた時、スタジアム全体が緑色に染まる光景は本当に圧巻でした。サポーターの一体感と熱気は、他では味わえない特別なものでした。
レンジャーズのサポーター文化
レンジャーズのサポーターは「ザ・フェイスフル」と呼ばれ、こちらも非常に情熱的なサポートで知られています。
特徴:
- 青色(ロイヤルブルー)のユニフォームで統一
- イギリス王室を讃える歌が多い
- スコットランドの伝統的な楽器(バグパイプなど)を使った応援
- ユニオンジャックを掲げることが多い
- 軍隊的・規律正しい応援スタイル
セルティックサポーターの元へと飛び込む前田大然🇯🇵🔥 pic.twitter.com/08aLEizli9
— Fooootest(サッカーブログ) (@Fooootest) May 12, 2024
現在の成績と実力の違い
近年の両クラブの実力差についても触れておきましょう。
2023年5月13日現在、これまでの対戦記録は通算436試合中、レンジャーズが169勝、セルティックが165勝、そして102引き分けとなっているように、歴史的には非常に拮抗した関係が続いています。
しかし、最近の傾向を見ると:
セルティックの優勢
- 近年のリーグ戦では安定した強さを見せている
- ヨーロッパの大会での成績も良好
- 若い才能のある選手の獲得に成功
レンジャーズの苦戦
- 2012年に財政破綻を経験し、一時期下部リーグに降格
- 近年復活したものの、セルティックに差をつけられがち
- 国内タイトル獲得に苦戦している
レンジャーズが最後に勝ったのは、2022-23シーズンの終盤5月に行われた一戦だ(3-0)という状況からも、現在はセルティックの方が実力的に上回っていると言えるでしょう。
オールドファームダービーとは?世界最激のライバル戦
セルティックとレンジャーズの対戦は「オールドファーム」と呼ばれ、世界で最も激しいライバル戦の一つとされています。
オールドファームの特徴
試合の激しさ
- 通常、1シーズンのリーグ戦では4回対戦し、2つのカップ戦でもそれぞれ顔をあわせている
- 選手もサポーターも特別な意気込みで臨む
- 世界中のサッカーファンが注目する一戦
社会的影響
- 試合結果がスコットランド社会全体に影響を与える
- 警備が非常に厳重になる
- 試合前後は街全体がピリピリした雰囲気になる
私がスコットランドを訪れた際、地元の人から「オールドファームの日は外出を控える人も多い」と聞きました。それほどまでに社会に大きな影響を与える試合なのです。
両クラブの使い分け方と見分け方
実際に両クラブを区別する際のポイントをまとめてみましょう。
見た目での判断方法
ユニフォームの色
- セルティック:緑と白のストライプ
- レンジャーズ:青(ロイヤルブルー)が基調
エンブレム(クラブマーク)
- セルティック:四つ葉のクローバーモチーフ
- レンジャーズ:ライオンとサッカーボールのデザイン
スタジアムの場所
- セルティック:グラスゴー東部のセルティック・パーク
- レンジャーズ:グラスゴー南西部のアイブロックス・スタジアム
文化的な違いでの判断
サポーターの応援
- セルティック:アイルランドの歌、緑色のアイテム
- レンジャーズ:イギリス王室を讃える歌、ユニオンジャック
試合での雰囲気
- セルティック:よりエモーショナルで情熱的
- レンジャーズ:より規律正しく組織的
日本人選手との関係
日本のサッカーファンにとって興味深いのは、両クラブと日本人選手の関係です。
セルティックと日本人選手
- 中村俊輔が2005年から2009年まで在籍
- 古橋亨梧が現在活躍中
- 日本でのセルティック人気の火付け役
レンジャーズと日本人選手
- これまでに日本人選手の在籍実績は少ない
- しかし、スコットランドリーグでの日本人選手の活躍により注目度は上昇
中村俊輔選手の活躍により、日本ではセルティックの方が馴染み深いかもしれませんね。私も最初にこの2つのクラブを知ったのは、中村選手がセルティックでプレーしていた時でした。
世界での認知度と影響力
両クラブの世界での認知度にも違いがあります。
セルティック
- ヨーロッパカップ(現チャンピオンズリーグ)を1967年に制覇
- アイルランド系移民が多い国での人気が高い
- アメリカ、オーストラリア、カナダなどに多くのサポーター
レンジャーズ
- UEFAカップウィナーズカップを1972年に制覇
- イギリス連邦諸国での認知度が高い
- 北アイルランドでの人気が特に高い
国際的な視点で見ると、セルティックの方がわずかに認知度が高いかもしれません。これは、アイルランド系の移民が世界各地に散らばっていることと関係があります。
よくある質問(FAQ)
Q1:セルティックとレンジャーズ、どちらが強いの? A:歴史的には非常に拮抗していますが、近年はセルティックの方が優勢です。ただし、オールドファームでは予想がつかない展開になることも多いです。
Q2:なぜこれほどまでにライバル関係が激しいの? A:単なるサッカーの競争ではなく、宗教、政治、階級など、スコットランド社会の様々な対立が反映されているからです。
Q3:試合を観戦する際の注意点は? A:両クラブのサポーターが混在するエリアは避け、どちらかのサポーターエリアで観戦することをお勧めします。また、相手チームを挑発するような行為は絶対に避けましょう。
Q4:日本人がサポートするならどちらがいい? A:これは完全に個人の好みです。中村俊輔選手の影響でセルティックファンになった日本人は多いですが、レンジャーズにも魅力的な歴史と文化があります。
Q5:両クラブの経営状況はどう? A:セルティックは比較的安定していますが、レンジャーズは2012年の財政破綻から復活した経緯があります。現在は両クラブとも健全な経営を目指しています。
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セルティックとレンジャーズの違いを改めて整理すると:
セルティック
- 1887年設立のカトリック系クラブ
- アイルランド文化と深い関係
- 緑と白のユニフォーム
- 労働者階級・反体制的傾向
- 近年の成績は好調
レンジャーズ
- 1872年設立のプロテスタント系クラブ
- イギリス連合支持
- 青(ロイヤルブルー)のユニフォーム
- 中流階級・親体制的傾向
- 財政破綻から復活を目指す
この2つのクラブの違いを理解することで、オールドファームダービーの観戦がより深く楽しめるはずです。単なるサッカーの試合ではなく、スコットランド社会の縮図を見ることができる貴重な機会でもあります。
どちらのクラブも長い歴史と豊かな文化を持った素晴らしいチームです。宗教や政治の違いはありますが、どちらも地域コミュニティにとって大切な存在であることは間違いありません。
サッカーファンとして、この歴史ある2つのクラブの魅力を感じながら、ヨーロッパサッカーの奥深さを楽しんでいただければと思います。きっと、サッカーがただのスポーツではなく、人々の生活や文化と深く結びついたものだということを実感できるでしょう。