革靴を買おうとしたとき、「グッドイヤーウェルト製法」や「マッケイ製法」といった言葉を見かけたことはありませんか?私も最初は「何が違うの?」と思っていました。でも、この製法の違いを知ると、靴選びがもっと楽しくなりますよ!
今回は、革靴の5つの代表的な製法について、それぞれの特徴や違いをわかりやすく解説していきます。
ハンドソーンウェルト製法とは
娘に作った15.5cmの靴です。小さいですけどハンドソーンウェルトですよ!小さくて作りにくい部分もあれば、縫う量が少なくて楽な部分もあります。全体で考えると子供靴の方が楽です!特に出し縫いは大人の半分くらいなので楽です!娘は大きくなったらハイヒールを履きたいそうです。喜んで作りますよ! pic.twitter.com/2rTnV036bF
— KUROKIO 靴・木型製作 (@KUROKIO) March 12, 2024
ハンドソーンウェルト製法は、革靴作りの原点とも言える伝統的な手縫いの製法です。職人が一針一針、手作業で縫い上げていく最高級の製法で、「イングリッシュ・ウェルト製法」とも呼ばれています。
この製法では、アッパー(靴の上部)を作ってから、足裏にまとめて縫い込み、ソールを付けるという工程をすべて手作業で行います。完成するまでに非常に時間がかかり、高い技術が必要とされるため、とても貴重な製法です。
特徴的なのは、グッドイヤーウェルト製法で使われる「リブテープ」と呼ばれる部品を使っていないこと。そのおかげで、靴の返りがよく、スマートなフォルムに仕上がります。
私の知り合いに、このハンドソーンウェルト製法の靴を持っている人がいるのですが、「履き始めから足に馴染みやすい」と絶賛していました。ただし、価格は相当高額です。
グッドイヤーウェルト製法とは
グッドイヤーウェルト製法は、紳士靴の基本的な製法として広く知られています。アッパーとインソール、そしてウェルト(細い帯状の革)をすくい縫いでつなぎ合わせ、その後アウトソールとウェルトをつなぎ合わせる方法です。
この製法は、19世紀後半にアメリカのチャールズ・グッドイヤー2世が、ハンドソーンウェルト製法を機械化したことで生まれました。「すくい縫い」が機械で行えるようになったことで、靴の生産効率が飛躍的に向上したのです。
アッパーとアウトソールが直接つながっていないため、アウトソール単体の交換が複数回可能なのが大きな特徴。中底部分にはコルクを挟んでいるので、長時間履いているうちにこの部分が沈み込み、持ち主の足の形状に馴染んでくるんです。
我が家でも夫がこの製法の革靴を愛用していますが、「最初は硬いけれど、履き続けると本当に足に合ってくる」と言っています。ソールの張り替えを何度も繰り返せるので、長年履き続けることができますよ。
マッケイ製法とは
フェラガモの靴。
— boots leather (@bootsleather1) January 6, 2023
こういったハイブランドの靴は普段絶対履かないですが、革質の良さとマッケイ製法のそり返りの柔らかさ、雨の日でも履き込めそうなデザインが気に入って履いてます。 pic.twitter.com/UY7eHIgpRK
マッケイ製法は、イタリアのマルケ地方の伝統技法で、シンプルで軽量な製法として人気があります。中底、アッパー、アウトソールを靴の内側で一度に縫い合わせるため、構造がとてもシンプルです。
この製法の名前は、発明家ブレイクから権利を買い取ったゴードン・マッケイという人の名前に由来しています。
最小限のパーツで成形するため軽量で、ソールの返りに優れているのが特徴。足馴染みが良く、ソールを薄く、コバ(靴底の張り出し部分)を狭く抑えられることから、ドレッシーなフォルムを形成することができます。
私が初めてマッケイ製法の靴を履いたとき、その軽さに驚きました!グッドイヤーウェルト製法の靴と比べると、本当に軽くて柔らかいんです。ただし、構造がシンプルな分、クッション性に乏しく、靴底に縫い目があるので水が浸入しやすいというデメリットもあります。
ノルヴェージャンウェルト製法とは
ノルヴェージャンウェルト製法(ノルウィージャンウェルト製法とも呼ばれます)は、防水性が求められる寒冷地向けの靴製法として、ノルウェーなどの北欧で発祥した製法です。
アッパーの端は折り込まず外側に出し、アッパーとインソールの底部に彫られた突起をすくい縫いして、その後アッパーの端を、ミッドソール、アウトソールと一緒に出し縫いで合わせます。縫い目がコバの上に見えるのが特徴的です。
登山靴やスキー靴など、雪道を歩くための堅牢な靴作りに用いられてきました。防水性が高く、十分な堅牢性を備えているため、アウトドア靴の代表的な製法として知られています。
見た目にも特徴があり、2線のステッチが織り成すヘヴィデューティな面構えは、ノルヴェージャン靴ならではの魅力です。ただし、手の込んだ製法のため高価で、ファッションスタイルも限定されてしまう傾向があります。
セメント製法とは
おはようございます☀
— donuts hole (@donutsholeshoes) February 1, 2023
ウェルトは本来ならば中底とアッパーを縫い合わる役割がありますが、セメント製法などで使われるウェルトは予め取り付けられたダミーウェルトと呼ばれる物が使用されます
縫われている靴は堅牢でリペアが容易な場合が多くセメント製法はデザインの幅が広くコストが抑えられます👍 pic.twitter.com/g27as0UpvG
セメント製法は、アッパーとソールを接着剤で貼り合わせるシンプルな製法です。「セメンテッド式製法」や「ラバー製法」とも呼ばれることがあります。
日本では1950年代頃から使われている比較的新しい製法で、底付けの工程を機械化することができるため、大量生産に向いています。この製法の登場によって、それまで高価だったブーツやドレスシューズを、お手ごろな価格で生産できるようになりました。
縫いの工程がないので作業時間と効率を良くすることができ、製造コストが安く抑えられます。また、縫い目がある製法より水が浸入しにくいというメリットもあります。
我が家でも普段使いの靴はセメント製法のものが多いです。価格が手頃で、デザインも豊富なので選びやすいんですよね。ただし、通気性が悪く蒸れやすい点や、底の修理が困難で実質的に使い捨てになることが多い点は注意が必要です。
5つの製法の違いを比較
耐久性の違い
耐久性が最も高いのは、グッドイヤーウェルト製法とハンドソーンウェルト製法です。何度もソールの張り替えができるため、10年以上履き続けることも可能。ノルヴェージャン製法も堅牢性が高く、長く使えます。
一方、マッケイ製法は構造がシンプルな分、他の製法に比べると耐久性は劣ります。セメント製法は接着剤で貼り付けているだけなので、修理が難しく使い捨てになることが多いです。
履き心地の違い
履き心地で言えば、ハンドソーンウェルト製法とマッケイ製法が優れています。ハンドソーンウェルト製法はリブテープがないため返りがよく、マッケイ製法は軽量で柔軟性があります。
グッドイヤーウェルト製法は、履き始めは硬く感じますが、履き込むうちに中底が沈んで足の形にフィットしてきます。ノルヴェージャン製法も最初は硬く重い印象ですが、安定感があります。
セメント製法は中間的な履き心地で、特別な特徴はありませんが、無難に履けます。
防水性の違い
防水性が最も高いのは、ノルヴェージャン製法です。雪道でも難なく履けるように設計されているため、悪天候でも安心して履けます。
セメント製法も縫い目がないため、比較的水が浸入しにくい構造です。
一方、マッケイ製法は靴底に縫い目があるので水が浸入しやすく、雨の日には注意が必要。グッドイヤーウェルト製法とハンドソーンウェルト製法も、構造上は水が入りやすい傾向があります。
価格の違い
価格が最も高いのは、ハンドソーンウェルト製法です。職人が手作業で一針一針縫い上げるため、数十万円することも珍しくありません。
次に高いのがグッドイヤーウェルト製法で、安くても3万円以上、高級品だと10万円を超えることも。ノルヴェージャン製法も手の込んだ製法のため、同様に高価です。
マッケイ製法は比較的リーズナブルで、1万円台から購入できる靴も多くあります。セメント製法は最も安価で、数千円から購入可能です。
見た目の違い
見た目で最も特徴的なのは、ノルヴェージャン製法です。コバ上に2線のステッチが見えるヘヴィデューティな外観は、一目で分かります。
マッケイ製法は、コバの張り出しが少なくスマートなフォルムが特徴。ドレッシーな印象に仕上がります。
グッドイヤーウェルト製法は、コバがしっかり張り出していて重厚感があります。ハンドソーンウェルト製法は、グッドイヤーより少しスマートな印象です。
セメント製法は、縫い目が見えないシンプルな外観で、デザインの自由度が高いのが特徴です。
どの製法を選べばいい?用途別の選び方
ビジネスシューズとして毎日履くなら
毎日履くビジネスシューズなら、グッドイヤーウェルト製法がおすすめです。耐久性が高く、ソールの張り替えができるので、長く使えてコストパフォーマンスも良好です。
予算に余裕があれば、ハンドソーンウェルト製法の靴も素晴らしい選択肢。履き心地の良さは格別です。
予算を抑えたい場合は、マッケイ製法やセメント製法の靴でも十分。ただし、消耗品として考えた方がいいでしょう。
おしゃれ用の靴として
ドレッシーでおしゃれな靴を求めるなら、マッケイ製法がぴったりです。スマートなフォルムは、フォーマルな場面にもよく合います。
イタリア製の高級靴に多く採用されている製法なので、おしゃれ好きな人にはたまらない魅力があります。
アウトドアやタフに使う靴として
登山や雪道など、過酷な環境で使う靴なら、ノルヴェージャン製法一択です。防水性と堅牢性を兼ね備えた最強の製法と言えます。
見た目も無骨でかっこいいので、カジュアルなファッションにもよく合いますよ。
普段使いのカジュアルシューズとして
普段使いなら、セメント製法の靴が気軽でおすすめです。価格も手頃で、デザインも豊富なので、複数足を持っておくこともできます。
ただし、長く愛用したい一足を探しているなら、やはりグッドイヤーウェルト製法やマッケイ製法を選んだ方が満足度は高いでしょう。
製法による修理のしやすさの違い
靴を長く履き続けるためには、修理のしやすさも重要なポイントです。
修理しやすい製法
グッドイヤーウェルト製法とハンドソーンウェルト製法は、ソールの張り替えが何度でもできるため、修理しやすい製法です。アッパーがしっかりしている限り、20年以上履き続けることも可能です。
ノルヴェージャン製法も構造的には修理可能ですが、技術を持った職人が少ないため、修理できる店が限られます。
修理が難しい製法
マッケイ製法は、ソールの張り替えは可能ですが、構造上1〜2回が限度です。それ以上は靴本体にダメージを与えてしまいます。
セメント製法は、接着剤で貼り付けているため、基本的に修理は困難です。ソールが剥がれてきたら、買い替えを検討した方がいいでしょう。
製法を見分ける方法
靴の製法は、外見から見分けることができます。
コバを確認する
まず、靴底の張り出し部分(コバ)を見てください。
グッドイヤーウェルト製法は、コバがしっかり張り出していて、縫い目が見えます。ハンドソーンウェルト製法も同様ですが、よりスマートな印象です。
マッケイ製法は、コバの張り出しが少なく、スリムな印象。靴の内側から見ると、縫い目が見えます。
ノルヴェージャン製法は、コバの上に2本の縫い目が見えるのが特徴的です。
セメント製法は、縫い目が全く見えません。
靴の内側を確認する
靴の中を覗いてみると、さらに詳しく分かります。
マッケイ製法は、インソールの上に縫い目が見えます。グッドイヤーウェルト製法やハンドソーンウェルト製法は、インソールの下で縫われているので、内側からは縫い目が見えません。
重さで判断する
手に持ってみて、重さで判断することもできます。
グッドイヤーウェルト製法とノルヴェージャン製法は、構造が複雑で重厚なため、比較的重めです。
マッケイ製法は軽量で、セメント製法も中程度の重さです。
ハンドソーンウェルト製法は、リブテープがない分、グッドイヤーより若干軽く感じます。
グッドイヤーの靴でも、量産的に作られた靴と手作り的に作られた靴があります。
— Z (@zin_ryu01) May 16, 2022
同じ製法でアッパーをラストに沿わせ整型する工程で違いが出やすいが、慣れないとパッと違いがわかりにくい。
ただ、知見がない人でも簡単に見分ける方法があります。一つはウェスト部の釘跡の有無。(続く) pic.twitter.com/zDC7Rcvi8j
私の製法選びの体験談
私自身、革靴に興味を持ち始めた頃は、製法の違いなんて全く気にしていませんでした。でも、友達が革靴好きで、いろいろと教えてくれたんです。
最初に買ったのは、セメント製法の安価な革靴。デザインが気に入って購入しましたが、1年ほどで靴底が剥がれてしまい、修理もできず処分することに。
次に購入したのは、マッケイ製法のイタリア製の靴。軽くて履きやすく、見た目もスマートで大満足でした。ただ、雨の日に履いて行ったら、靴の中が濡れてしまったことも…。
そして現在愛用しているのが、グッドイヤーウェルト製法の靴です。購入してから3年以上経ちますが、一度ソールを張り替えてまだまだ現役。最初は硬くて履きにくかったのですが、今では私の足にぴったり馴染んでいます。
子どもの学校行事でたくさん歩く機会があったとき、この靴のありがたみを実感しました。長時間歩いても疲れにくく、足元がしっかり支えられている感覚があるんです。
製法を理解すると、靴選びの基準が変わります。「今回は普段使いだからセメント製法でいいかな」「大切な場面で履きたいからグッドイヤーウェルトにしよう」と、用途に合わせて選べるようになりました。
よくある質問
Q1. グッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法、どちらがおすすめですか?
用途によって異なります。長く履き続けたい、修理しながら大切に使いたいという方には、グッドイヤーウェルト製法がおすすめです。耐久性が高く、何度もソールの張り替えができます。
一方、軽くて柔らかい履き心地を求める方、ドレッシーなデザインが好きな方には、マッケイ製法が向いています。イタリア製の高級靴に多く採用されている製法で、おしゃれな印象に仕上がります。
価格面では、マッケイ製法の方が比較的リーズナブルです。ただし、長期的に見ると、修理しながら長く履けるグッドイヤーウェルト製法の方がコストパフォーマンスは良いかもしれません。
Q2. セメント製法の靴は質が悪いのですか?
セメント製法だからといって、必ずしも質が悪いわけではありません。確かに修理が難しく、使い捨てになりやすいというデメリットはありますが、製造コストを抑えられるため、手頃な価格で購入できるメリットがあります。
また、デザインの自由度が高く、さまざまなスタイルの靴を作ることができます。普段使いのカジュアルシューズとして、複数足を持っておくには最適です。
大切なのは、靴の用途と予算に合わせて適切な製法を選ぶこと。すべての靴を高級な製法で揃える必要はありません。
Q3. ハンドソーンウェルト製法とグッドイヤーウェルト製法の違いは何ですか?
最大の違いは、手作業か機械作業かという点です。ハンドソーンウェルト製法は職人が一針一針手縫いするのに対し、グッドイヤーウェルト製法は機械で縫製します。
構造面では、グッドイヤーウェルト製法には「リブテープ」という部品がありますが、ハンドソーンウェルト製法にはありません。このリブテープがないことで、ハンドソーンウェルト製法の靴は返りがよく、履き始めから足に馴染みやすいという特徴があります。
価格は、手作業のハンドソーンウェルト製法の方が高額です。どちらも長く履き続けられる製法ですが、究極の履き心地と品質を求めるなら、ハンドソーンウェルト製法がおすすめです。
Q4. 雨の日に履ける製法はどれですか?
防水性を重視するなら、ノルヴェージャン製法が最もおすすめです。雪道を歩くための靴作りに用いられる製法なので、防水性は抜群です。
次に、セメント製法も縫い目がないため、比較的水が浸入しにくい構造です。ただし、完全防水というわけではないので、過信は禁物です。
マッケイ製法は、靴底に縫い目があるため水が浸入しやすく、雨の日はできるだけ避けた方が無難です。グッドイヤーウェルト製法とハンドソーンウェルト製法も、構造上は水が入りやすい傾向があります。
革靴を雨の日に履く場合は、防水スプレーをしっかりかけておくことをおすすめします。
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革靴の5つの製法について解説してきました。それぞれの特徴を簡単にまとめると、次のようになります。
ハンドソーンウェルト製法は、職人の手作業による最高級の製法で、履き心地が良くスマートなフォルム。ただし価格は非常に高額です。
グッドイヤーウェルト製法は、耐久性が高く何度もソール交換ができる製法。履き込むほどに足に馴染み、長く愛用できます。
マッケイ製法は、軽量でドレッシーなフォルムが特徴。比較的リーズナブルですが、耐久性はやや劣ります。
ノルヴェージャン製法は、防水性と堅牢性に優れた製法。アウトドアシーンに最適で、無骨なデザインが魅力です。
セメント製法は、接着剤で貼り合わせるシンプルな製法。価格が手頃で普段使いに最適ですが、修理は困難です。
靴を選ぶときは、用途や予算、求める機能に合わせて製法を選ぶことが大切です。この記事が、あなたにぴったりの革靴選びの参考になれば嬉しいです!